「メディカルシェフ入門」第53回 ワカメ


 
ワカメは褐藻(かっそう)コンブ目チガイソ科ワカメ属の藻種で、日本近海で広く採取されています。秋から冬に繁茂して春から夏には流れてしまう一年生の海藻なので、縦に長い日本列島では採取期が少しずつずれます。
 
ワカメには、ワカメ(葉状部が大きく羽状に裂けている)、ヒロメワカメ(葉状部は裂けていない)、アオワカメ( 葉状部に羽状の裂け目はない)の3種があり、食用として主に利用されているのはワカメのみです。3種をよく観察すると、どれも葉状部が大きく、羽状に裂けていて、三陸沿岸中心のものと鳴門地方中心のものとでは全体の形状に違いがあることに気づきます。
 
日本では縄文時代から様々な海藻が食されてきました。中でもワカメが最も多く食卓にのぼり、今では家庭用・業務用を問わず、年間1人当たり約2㎏ が消費されています。
 
1958年に岩手県で養殖が開始するまでは国内で消費される全てのワカメが天然もので賄われていましたが、1960年代半ばになると日本各地で本格的に養殖が行われるようになりました。近年では国内における養殖ワカメの生産量が大幅に増加し( 約13万トン。年間消費量の90%)、不足分は韓国や中国からの輸入に頼っています。
 
現在では韓国、中国、フランスでも養殖ワカメが生産され、韓国東南海岸地域で生産される30万トン以上の養殖ワカメのうち、約3分の1が湯通し塩蔵ワカメや乾燥製品として日本に輸出されています。
 
朝鮮半島におけるワカメの消費量は日本の3倍といわれ、韓国では天然ものと養殖ものに歴然としたブランド差があり、天然ものは高値で取引されています。ワカメを食用にしている国は日本と朝鮮半島だけでしたが、日本の養殖技術の導入によって日本輸出用に養殖されていたものが中国国内の市場に出回るようになったことから近年では中国でも食べられています。
 
日本のワカメは収穫時期が冬から春までと短いため、長期利用を可能にするために各地で特徴的な特産品が生産されています。徳島県鳴門市周辺の特産品「鳴門灰干しワカメ」は1846年に発見された製法に改良が加えられ、商品価値の高いものとなりました。生鮮ワカメに草木灰(そうもくばい)を塗布して天日乾燥することでワカメが褐色から鮮やかな緑色になり、常温で周年貯蔵しても褪色せず、生鮮品に近い弾力や歯切れ、香気を保つ上、防黴(ぼうばい)性( カビや細菌の発生や増殖防止)にもすぐれています。これは灰中のアルカリ成分が藻体の酸性化を防ぎ、クロロフィルの分解を防止するとともに、藻体のアルギン酸分解酵素の活性を抑制するためと考えられています。
 
海藻類はミネラル組成がよく、中でもワカメのアルカリ度は261と野菜類をしのぎ、食品の中でも特異的です。大部分が粘質多糖のアルギン酸から構成され、ビタミン類をバランスよく含んでいます。
 
ワカメの大部分が未消化のまま体内のナトリウムを吸着して体外に排泄する降圧作用があり、血中のコレステロールを正常に保つ他、ある種の腫瘍抵抗性を示すなど、様々な機能を持つ食品です。
 

 

小林 薫音満/こばやしかおみ(愛称カノン)
 
リマ・クッキングスクール師範科主任講師、及びメディカルシェフ育成講座講師。久司学院レベルIV、昭和薬科大学卒。現在、星薬科大学大学院在籍。「明るく楽しいマクロビオティック」がモットー。著書「マクロビオティック 至福のレシピ」など多数。
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