「メディカルシェフ入門」第56回 モチムギ


 
モチムギはオオムギの仲間ですが、大麦の加工品である「押し麦」や「丸麦」ほど知られていません。
 
モチムギはイネ科オオムギ属に分類され、ルーツを辿るとオオムギにたどり着きます。大麦にはビール麦として知られる「二条大麦」と、食用大麦として麦茶や焼酎、味噌の原料となる「六条大麦」の2種類があります。六条大麦には「皮麦(かわむぎ)」と「裸麦(はだかむぎ)」の2種類があります。
 
皮麦を栽培している中で、遺伝的変化( 突然変異)が起こり、表皮がはがれやすい裸麦が出現しました。さらに、裸麦を栽培している中で、穂の色が紫色になる遺伝的変化が起きました。その穂を採種したものを播種して栽培するようになったのがモチムギです。皮麦は皮が硬く、精麦(せいばく)( 麦を搗く)するため、食材としては白い色をしています。
 
モチムギは、紀元前3000年頃には西南アジアで栽培されていたといわれています。イネ科の植物の先祖は開けた草原に適応した種が多く、野生のイネ科植物は細かい根を持っているため、葉茎が食べられても簡単には抜けません。種を保存するために一斉に穂を出さず( 柔らかいうちに食べられて種が残らないため)、群落を作って絶滅するのを防ぐなどの特性があります。そこには草食動物による食害の危険性を免れるための進化の過程があったのです。ヒトはそうした草原の野生植物の特徴に目をつけて採集し、ついには採種した穀物を栽培することを思いつきました。さらに、その過程で突然変異が起こり、ヒトにとって都合の良い遺伝的変異が選択されてきたのです。
 
西南アジアで栽培されていたモチムギは、ユーラシア大陸全土とアフリカ東北部に伝わりました。現在、栽培が行われているのは、東アジアの日本や中国・朝鮮半島だけです。昭和初期は団子にしたり( だんご麦)、米の代用食として食されていましたが、白米食に押されて生産・流通が減少しました。
 
ところが近年、健康志向の高まりや雑穀ブームなどの影響でモチムギの栄養価が見直され、流通と生産が増加傾向にあるようです。
 
モチムギは穀類の中でも特に食物繊維が豊富で、白米の26倍、玄米の4・3倍含まれています。食物繊維の多くを占めるβ- グルカンの粘り気には食べ物をゆっくり消化する働きがあるため、血液中の糖の量が増え過ぎず、インスリンの分泌も抑えられ、食後の急激な血糖値上昇を予防します。さらに、次の食事でも血糖値の上昇を抑える効果が継続するなど、糖尿病予防に期待されています。
 
モチムギに豊富に含まれる食物繊維のうち、不溶性食物繊維は便通改善に、水溶性のものは腸内細菌( 善玉)の栄養となるため、腸内環境が整います。ビタミン類はモチムギより玄米の方が
少々勝っているので、モチムギを玄米に混ぜて食べることをお勧めします。モチムギと玄米の相乗効果が期待できそうです。
 

 

小林 薫音満/こばやしかおみ(愛称カノン)
 
リマ・クッキングスクール師範科主任講師、及びメディカルシェフ育成講座講師。久司学院レベルIV、昭和薬科大学卒。現在、星薬科大学大学院在籍。「明るく楽しいマクロビオティック」がモットー。著書「マクロビオティック 至福のレシピ」など多数。
 
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