「My Macrobiotic Life」新たなステージを 目指して

 

厳格さが災いして…

 

「この家はどうかしている!」運動会を終えた当時小学5年の息子がすごい剣幕で帰宅しました。問題はその日のお弁当。普通なら唐揚げやお肉が入るところに自分だけコンニャク
の煮物が入っていて恥ずかしかったというのです。

息子と3歳下の娘は幼少の頃よりアレルギー性鼻炎や皮膚疾患などで病院通いの日々。症状は改善せず、次々に薬を変えるだけの西洋医学的対症療法に疑問を感じていました。

その頃「マクロビオティック」という言葉に出合い、我が家の厳しい食生活が始まりました。当初、不満をもらしていた子どもたちも「身体によいのだから美味しくなくても仕方ないの!」という私の説得に諦めていたようでした。動物性食材を制限し、砂糖不使用となると、ほぼ何でも手作りしなくてはならず大変でしたが、子どもたちの症状が改善されていくことにやり甲斐を感じていました。

しかし、ひとつのことを始めると夢中になってしまう私の性格が災いし、「そこまで厳格にしなくても…」という夫の言葉に耳も貸さず、独りよがりなやり方でつき進んでいました。今思えば、家族のその時々の体調や気持ちを無視して、楽しく美味しく食べることをおざなりにしてしまったと反省することしきりです。年に何度かの学校行事のお弁当くらい唐揚げを入れてあげてもよかったのにと、ちょっぴり切ない気持ちになります。

 

身体の声を聴く

 

子どもたちも中高生になり、症状はかなりよくなりました。自分の時間もでき、次の人生、何かを始めなくてはという焦りを感じていた頃、近くの玄米菜食食堂でいただいた蓮根バーグ定食の美味しさに衝撃を受けました。動物性食材不使用とは思えないメイン料理の味と食感、もっちりとした玄米ご飯に、昆布・椎茸出汁の味噌汁の染みるような味わい。食後はお腹も心も満足感で一杯でした。

そして、トイレのドアに「日曜スタッフ急募」の張り紙を発見。「年齢不問」の文字に勇気づけられ、その日のうちにスタッフに応募しました。実はこの食堂「米の子」店主の市川啓さんは、カノン小林先生にマクロビオティックを学び、私にリマ・クッキングスクールを紹介してくださった方でもあります。常に誠実で丁寧に素材と向き合う姿勢、そこから生まれる美味しく美しい料理に触れるうちに、自分も新たなステージを目指してマクロビオティックをきちんと学びたいという思いが強くなりました。

初級コースで学び始め、火の入れ方や塩・油の使い方で素材の美味しさを引き出す料理法を知り、自分の料理が変わっていくのを感じました。上級コースでは季節を感じ、誰のためにどんな料理を作りたいのかをイメージすることや、陰陽バランスを意識して自然に寄り添い生活することの大切さを学びました。

師範科に進んだ頃、身体の不調を感じるようになり、「食生活が陽性に偏り過ぎでは?」という同期の友人たちの指摘にハッとしました。そこで、主食を三分搗きご飯にしたり、生野菜や果物も適量摂り、少食を心掛けたところ、驚くほど元気になったのです。考えてみると、学び始めて一年ほど、主食は絶対に玄米、生野菜や果物は厳禁といった固定観念に縛られていました。身体の声を聴いて食べる( 食べない)ことがいかに大事か、身をもって知った貴重な体験となりました。

 

新たなステージへ

 

卒業前の最大の難関「試作会」。紆余曲折の末、ビビンバを作ることに決め試作を始めた頃、思いがけないことが起きました。時々お手伝いしている神保町の「未来食堂」で、試作の味見をお願いしたところ、「来週の定食のメインで出しましょう」と言われたのです。お客様に出す以上、理屈はさて置き、美味しいものを作らなくてはなりません。学んだことを総動員し、どうしたら美味しくなるか、それだけを考え試行錯誤が始まりました。試作会10日前、本気モードのスイッチが入った瞬間でした。

当日は「これならあと4杯いけるよ!」「うちでも作ってみたいわ」とお客様から声をかけていただき、達成感で満たされました。この勢いのまま迎えた試作会では、皆さんから「本当に美味しい」とお褒めの言葉をいただいた上に優秀賞までいただきました。師範科では「あなたの料理は悩みながら作ったのがわかる」と先生から指摘をされていました。そんな私が、頭であれこれ考えず、「美味しく食べて欲しい」という一心で作った料理で人に喜んでもらえた! この体験は、今後料理を作っていく上での大きな自信になりました。

 

修了してホッと一段落。「今日の自分があるのは、マクロビオティックを通じて得た様々なご縁と学びのお陰だな」と、感謝の気持ちがじわじわと沸いてきました。そんな頃、本誌のバックナンバーを読み返していたところ、2017年1月号に、西邨マユミさんの「守破離の教え」の記事を見つけました。その瞬間「これだ!」と思いました。

私は基本を守る「守」に縛られ過ぎて体調を崩しました。そして、頑なに実行していた食生活を少し「破」ってみて新たな気づきを得ました。これからの私に必要なのは「離」のステージ。ここを目指して今までの学びを深める一方で新しいことにもチャレンジしつつ、食や生活の在り方を自分なりにデザインしていきたいと思います。

食を通じて自分の体験や気づきをお伝えしていくことが、人生後半の課題になりそうです。

SHOP DATA
玄米菜食 米の子
東京都杉並区西荻北3-25-1
TEL:03-3390-1276
営業時間: 11:30~14:00 18:00~21:00
定休日:木曜夜
アクセス:JR「西荻窪駅」北口より徒歩4分
www.komenoko.com

 

阪井 幸子 / さかい さちこ

リマ・クッキングスクール師範科修了(2017年夏期)。試作会で優秀賞受賞。リマ・クッキングスクールで本物のマクロビオティックに触れ、その奥深さに驚愕。現在はローフード、グルテンフリーの料理やスイーツも勉強中。過去の様々な反省から、バランス感覚を大切に、身体の声に応える、美味しく美しい料理を研究する日々。

 

月刊マクロビオティック 2018年2月号(965号)より

マクロビオティックとその料理法に関するホットな情報、健康と美を創り、生命をはぐくむための食と、その知識のご紹介、などなど・・・。あなたの人生を豊かにする情報が毎号満載です。日本CI協会で行っている料理教室や講座などのお知らせもご案内しています。

(本体価格600円+税) 発行元:日本CI協会

 

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