「メディカルシェフ入門」第57回 アラメ


 
アラメ( 荒布)は褐藻(かっそう)植物と呼ばれる暗褐色の海藻の仲間で、ワカメ( 若布)に対して肉が厚く荒い感じがするところから名付けられました。全長1〜3メートルほどになる大型の多年生藻で、岩礁上に群生して海中林を作り、アワビなどの貝類やタコ、イカ、伊勢エビなどの無脊椎動物、魚類の餌や生育場所としてなくてはならない重要な海藻です。そのため、アラメの採り過ぎは漁業経済上からも悪影響となるので採集が減少しています。
 
ヒジキほどの馴染みはないかもしれませんが、日本では古く「大宝律令(たいほうりつりょう)」や東大寺の正倉院の文書にも登場し、「延喜式」によると平安時代には「滑(まなかし)海藻」という名で食されていたことが記されています。
 
アラメはどこで採れても食用になりますが、その多くは幼体を食用にします。成体は硬いので食用にしません( 地域・地区によっては成体でも柔らかく美味なものもあります)。
 
都市部では乾燥アラメが主流で、生のアラメが店頭に並ぶことは滅多にありません。採集地の青森県、三重県、島根県、静岡県などでは、冬になるとカットして束ねられた生アラメが店頭に並びます。現地ではザッと洗って千切りにし、生のままお椀に入れてその上から熱い味噌汁をかけたり、炒め煮にするのが一般的です。
 
生アラメ炒め煮は、千切りにした生アラメを一度熱湯で1〜2分煮た後、流水で粘りを充分に取ってザルにあげて水切りをします( 強い粘りとアクが出る。アクは渋みの元なのでしっかり取る)。次にフライパンを温めて油をひろげ、長めの笹がきごぼうや人参、油揚げなどを炒めてからアラメを加えて炒め合わせ、醬油、好みで味醂などで味を調えます。
 
乾燥アラメでつくる場合はもっと簡単です。マクロビティックな調理方法では、野菜(海中植物含む)の乾物は出汁を取るとき以外は原則として浸水しないので、サッと洗ってザルに取るだけです。ただし、調理中の加熱
時間は長め(30〜40分間)になります。アラメはクセがない分、旨みや甘みに乏しいので、玉ねぎを取り合わせると美味しくなります。小ねぎの小口切りや空炒りした種子・ナッツ類をトッピングすると、子どもから高齢者まで幅広くいただけます。
 
藻体から抽出されるアルギン酸は増粘性多糖類の食物繊維で、加工食品を安定させる物質・食品添加物としての用途があり、健康補助食品(フコイダン)の原料になっています。
 
アラメなどの褐藻に炭酸ソーダを加えて抽出し、さらに酸あるいは塩化カルシウムでゲル化して製造したアルギン酸ナトリウムは、乳化安定剤としてビールの泡の安定剤、麺のつなぎ・コシの強化、パンの組織改質剤、麺スープなどのトロミ付け、増粘剤、魚卵、フカヒレ、トリュフ、チーズなどのコピー食品製造、再構成肉の結着剤、球形ゼリーの形崩れ防止など、様々な食品に用いられています。その他、化粧品や練り歯磨き粉、液体シャンプー、液体合成洗剤の基礎材料、医療・医薬分野、農業分野、製糸工業など、利用分野は多岐にわたります。
 
一見地味な食材ですが、アラメに含まれるアルギン酸には整腸作用があり、フコイダンには抗酸化作用( がん予防作用・若返り作用)があることが知られています。食卓にのせる機会を多くしていただきたい食材のひとつです。
 

 

小林 薫音満/こばやしかおみ(愛称カノン)
 
リマ・クッキングスクール師範科主任講師、及びメディカルシェフ育成講座講師。久司学院レベルIV、昭和薬科大学卒。現在、星薬科大学大学院在籍。「明るく楽しいマクロビオティック」がモットー。著書「マクロビオティック 至福のレシピ」など多数。
 
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