「メディカルシェフ入門」第58回 キク花(食用菊)

 

キクの品種はとても多いのですが、中でも食用を目的としたものを食用菊と呼びます。原産地の中国では、紀元前から不老長寿をもたらす花として親しまれ、菊酒・菊茶・漢方薬として用いる伝統がありました。
 

キク科イエギク属に分類される食用菊は、観賞用のキクに比べて苦みが少なく、花弁を大きく品種改良した品種です。現在も栽培されている延命楽( もってのほか、カキノモト)と呼ばれるこの品種は、8世紀後半の
天平時代に唐の使者によって日本に伝えられました。最初は主に薬草として用いられ、貴族社会を中心に重陽(ちょうよう)の節句( 旧暦9月9日)の菊酒や真綿に菊花の香りを移す「着綿(きせわた)」などに使われていました。
 

平安中期の延喜式( 平安時代の法令集。927年完成)に制定されている典薬寮(てんやくりょう)( 宮内省に属する医療・調薬を担当する部署)の記録には、黄菊花が記述されています。その後観賞用としての栽培が始まり、一般の人々の食用として普及するのは江戸時代前期以降になります。
 

現在、食用として用いられるのは、黄色や紅紫色、白色の八重咲種が多いのですが、食用にするキクはそれほど改良されてないため、総品種数は多くありません。大輪種には阿房宮(あぼうきゅう)( 黄菊)・名取川・秋田白菊など、中輪種には延命楽( 紅紫菊)・高砂( 白菊)・月山( 淡紫色)など、小輪種にはつま菊( 黄菊)などの品種があります。香りが高く、苦みが少なく、加熱しても色が変わらないので、ベジタリアン用の寿司類を調理する際には錦糸卵のようなイメージで活躍します。
 

日常生活でよく目にする食用菊は、お刺身などに添えられるつま菊( 小菊)です。一般的に食さず残すことが多いのですが、彩りだけが目的で添えられているわけではありません。含有成分のグルタチオンには解毒や抗菌・殺菌作用があり、腐敗防止効果による食中毒予防が期待されています( 花びらをお刺身の上に散らして、一緒にいただくのが良いとされています)。
 

また、キク花にはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やイソクロロゲン酸も含まれています。これらには抗酸化作用( 細胞の変質・老化予防作用)があるので、抗加齢効果やがん予防効果が期待されています。
 

現在はハウス栽培がほとんどなので通年出回っていますが、旬は秋です。この時期の食用菊は香りが強く、季節感を大いに楽しめますが、時間とともに香りがなくなって色も落ちるので、できるだけ早く調理しましょう。
 

キク花は美しい色と香り、シャキシャキした歯触りを楽しむことができ、失われつつある季節感や潤いを与えてくれる大切な脇役です。そのまま料理にあしらったり、花弁を摘み取って塩と酢を加えた熱湯でサッと茹でて水にさらし、ザルに取って絞ったものを酢の物やお浸し・酢漬けとしていただきましょう( 余った時は薄く板状にしてラップで包み冷凍します)。
 

また、乾燥品で菊のり( または干し菊・蒸し菊など)と呼ばれるものがあります。青森県八戸市の特産品で、生のものに比べてビタミン類が7〜15倍含まれており、タンパク質・カルシウム・リン・鉄なども多く含まれています。乾燥させたものは、水に浸けて戻してから熱湯をかけ、水気を絞ってから使いましょう。
 


 

小林 薫音満/こばやしかおみ(愛称カノン)

リマ・クッキングスクール師範科主任講師、及びメディカルシェフ育成講座講師。久司学院レベルIV、昭和薬科大学卒。現在、星薬科大学大学院在籍。「明るく楽しいマクロビオティック」がモットー。著書「マクロビオティック 至福のレシピ」など多数。

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